被評価企業 ; 株式会社レオパレス21

事案経過 (1):(令和元年7月2日時点)

CSR(企業の社会的責任)評価: (審査中)

 

(1)サブリース問題の発端とリスク

「レオパレス21問題」で浮き彫りに!―日本住宅性能検査協会が「サブリース問題」で、果たした役割―

界壁問題等で揺れているレオパレス21、まさに企業のCSR(企業の社会的責任)が問われています。

過去7年間で相談センター(日本住宅性能検査協会)に持ち込まれた事案約500件余の中で、殆どがレオパレス21社絡みでした。これらコンサルの現場経験からサブリース問題の本質を考察し、以って、健全なサブリース制度発展の灯火としたい。

ちなみにサブリース第1号は 矢崎ホワイトビル(1984年3月竣工)と言われています。 また、「サブリース」の一般用語としては、日経最初の記事(1991年8月12日)であると言われています。

「落とし穴」が浮き彫り

サブリース業者は、サブリース契約のメリットをセールストークにして、土地所有者に自社または関連建設会社のアパート建設を促すビジネスモデルを構築。1992年の生産緑地法改正で「農地の宅地並み課税」が導入されると、土地の有効活用や相続税対策とも相まって、アパート建設大手4社(大東建託、レオパレス21、積水ハウス、大和ハウス工業)の受注高が大きく拡大していきました。

ところが、その一角を占めるレオパレス21とサブリース契約を結ぶアパートオーナーが、大幅な賃料減額や突然の解約を突きつけられるトラブルが相次ぎました。これらの事例からは、たとえ30年一括借上げの契約を結んでも将来リスクを抑制できないという、サブリース契約の「落とし穴」が浮き彫りになりました。

寄せられたレオパレス21「サブリース契約を巡る相談事例」

  • 物件築年数が4年目にもかかわらず、サブリース業者から賃額減額を求められた
  • 物件築年数が14年目で、いきなり契約解除の申し入れがあった。
  • 物件築年数が6年目にもかかわらず、止む無く賃料減額に応じたが、その半年後にも再度賃料減額の申し入れがあつた。
  • サブリース業者からの太陽光発電パネルの設置、セキュリティ設備の設置工事の要求を拒否すると、いきなり賃料減額の申し入れがきた。
  • 物件年数が15年目で賃料減額を迫られた。このアパート収入だけでは、次月の原稿返済が不可能なので意図的にデフォルトしたい。競売を覚悟している。

 原因は、2008年のリーマンショックか?

そもそもレオパレス21が賃料の大幅減額や契約解除を求める原因は、2008年のリーマンショックにさかのぼります。単身者用アパートを得意とする同社では、管理する物件の半数近くを製造業者や派遣会社などとの法人契約が占めていました。ところがリーマンショックによって工場の稼働率が低下すると、そこで働く派遣社員等の非正規社員が契約を切られ、製造業者者や派遣業者もレオパレス21と結んでいたアパート契約を打ち切りました。同社が管理するアパート物件の空室率は20%を越える水準まで悪化。アパートオーナーに支払う賃料総額が入居者から得る転貸料総額を上回る逆ザヤとなり、賃貸事業の大赤字によって同社のキャッシュフローはきわめて厳しい状況に陥いりました。

解約に向けて空室状況をコントロール

ただ、実際はリーマンショックだけが原因かと言うと、そうではなく、近隣にどんどん物件を建てたたために、その為空き室が増加、しかも、レオパレスは、空き室状況を調整できる立場にあるので、古い物件を解除してその住人を他の新レオパレス物件に移転させていました。 あくまでも、住人の意思と言っていますが、「残るとテレビ、冷蔵庫、洗濯機、ベッドといった家財道具インターネットも使えなくなる。近くにもっと新しい物件で、同様の条件で賃貸できる物件がある。」等と説明されれば、住人が移転してしまうことは簡単に想像できます。 やりたい放題の末、自分の利益だけのために、オーナーを切捨てるのは、サブリースを勧誘し、事業を予測・提案した責任者として許されません。市場を無視し、建設した結果、赤字が膨らんで行きました。この赤字は自己責任でもあった。結果、レオパレス21は、オーナーに支払う賃料の減額交渉を開始せざるを得なくなりました。

支払い賃料の引き下げと空室損失引当金戻入益等の発生によって、2013年決算の純利益は2期ぶりに黒字に転換しました。だが、そのしわ寄せを受けたのが同社の勧誘によってアパートを建設し、サブリース契約を結んだアパートオーナー。しかも、これまでに多くのトラブルが急激に発生した背景には、同社が取り組む賃料の減額交渉が、実は解約を導くための前提交渉だったのです。

解約「終了プロジェクト」内部メール

相談センター(日本住宅性能検査協会)が入手したレオパレス21の内部メール(内部告発2011.9月) には、

「いよいよわれわれの力が試されるときです・・」。2011年8月10日、同社幹部から各現場責任者に対して「終了プロジェクト」の奮起を促すメールが一斉送信されました。

終了プロジェクトとは、中途解約条項が結ばれている収益悪化物件について、サブリース契約の解除を図る仕組みです。

メール文には「内容証明等を積極的に使用し、交渉困難な案件は解約通知を送付して3ケ月後には全室明け渡しとする」よう指示が飛んでいる。

さらに、「10年超の案件は基本的に解約を前提とした交渉を行なう」として、「9月以降の本格的解約目標設定に先立ち、月内に一定の確率で解約に持ち込むためのスキーム・トークフロー・業務フロー等を構築する」と記されています。

また、「解約を辞さない強気の交渉」「オーナーからの解約の話が出ない場合はそもそも提示額が低すぎる」など賃料の大幅減額の提示を促しているほか、10年未満の物件についても賃料減額を目指すように指示しています。

文末では、「10年超えは基本解約という意識が足りていなし社員が見受けられるので、各責任者は意識付けを徹底するように」と締めくくっています。上場企業としてのあるべき「公益」の精神の欠片もない内容です。

入手したメールは社会に対して多大な影響を及ぼすと判断、マスコミ・専門誌に公表した。これを発端として、一般に言われる「サブリース問題」が顕著化して行きました。

管理戸数大幅な減少

アパート経営を維持する為に多くのオーナーが大幅な賃料減額を受け入れざるを得なかったとみられ、レオパレス21の管理戸数(12年3月末時点) が前期比1万5000戸も減少していることから、解約にいたったケースが多数のぼると推測されます。

ここで問題なのは、レオパレス21の物件は、前述したようにテレビ、冷蔵庫、洗濯機、ベッドといった家財道具がリース物件として備え付けられていることです。

サブリース契約が解除となれば、これらリース物件はリース会社に返却されるため、入居者は家財道具一式を失うことになります。そのためレオパレス21が入居者に対して近隣のレオパレス物件を紹介することで、契約解除時にはアパートが全室空室になって戻ってくるといった自体が多発しました。

借地借家法で保護されるサブリース業者

レオパレス21が賃料減額や契約解除に関して強気な交渉を行なえるのは、サブリース業者がアパートオーナーとの関係において借地借家法で保護されているためです。

不動産の賃貸借契約を規定している借地借家法は、契約上の弱者である賃借人の保護が立法趣旨。同法32条1項は賃借人に「賃料減額請求権」を認めており。これは強行規定でもあり、一連の最高裁判決では、サブリース契約が不動産賃貸借契約である以上、同法32条1項が適用されるとの判断が示されています。(資料2)(資料3)

アパートの賃借人が家賃減額を申し出て、受け入られなければ契約期間中であってもアパートから退去することは一般的でありうる話であり、この関係をサブリース契約にあてはめると賃借人はサブリース業者で、賃貸人はアパートオーナーです。サブリース業者が借地借家法で保護されることできわめて優位な立場となり、物件が新しく空室率が低いうちは借上げ契約を継続し、30年一括借上契約を結んでおきながら収益性が落ちたら契約を終了するといった商法を行なえる余地が生じるわけです。衡平な原則に反する行為と言えます。

サブリース業者から一方的な解除

「なんのための30年一括借上げなのか」。家賃の大幅減額と契約解除を天秤にかけられたアパートオーナーからは、こうした疑問の声があがります。サブリース契約では、賃料見直しの協議で合意できなければ契約が終了する条項や、一定期間経過ごとの修繕に応じない場合には契約を更新しない条項など、サブリース業者側から容易に契約を解除できる条項が目立ちます。入居者が変わる際の室内クリーニング等もオーナー側負担になっていることが多いい。

50%は全く「長期収支計画」を策定せず

問題は、こうしたリスクやコストなど、アパートオーナーに不利益を及ぼしかねない重要事項について、勧誘するサブリース業者に説明義務を買う法規制が存在しませんでした。勧誘時には見通しの甘い説明になるおそれがあり、国土交通省が2004年9月に行なった調査によれば、賃貸住宅の長期収支計画を全く策定していないオーナーが5割近くに上っている。余りにも経営に無関心と言わざるを得ません。

勧誘時顧客に手渡すパンフレットをみても、「30年間の安定収入」「30年空室リスクなし」など、サブリース契約のメリットを強調するキャッチコピーばかりが目に付き、契約解除に関するリスク説明らしき文言は見当たりません。アパート経営に将来にわたって大きなリスクとコストを伴う不動産投資事業であるにもかかわらず、勧誘時の説明不足がトラブルに繋がる原因になっている可能性があります。

 

(資料4)

民間賃貸住宅に係る実態調査(不動産業者) 19年6月

「管理物件の長期的な収支計画」

  1. 大半の住宅で作成     21社 11.3%
  2. 半数程度の住宅で作成   22社 11.8%
  3. 大半の住宅で作成してない 100社 53.8%
  4. 全く作成していない     43社 23.1%

合計 186社 100.0%

衆議院予算委員会で質問

サブリース契約を巡る問題が増え始めていることを受けて、日本住宅性能検査協会

トラブルコンサル実績及び分析結果に基づき、2013年4月15日衆議院予算委員会第一分科会で共産党の宮本岳志議員が、サブリース契約問題、特にレオパレス21について国交省相手に質問を行ないました。(資料5)

この質疑が発端となり、国土交通省 賃貸住宅管理業者登録制度に、2016年9月から建築提案時から独自のパンフレットやカタログに家賃の減額について記載し、説明する義務を課しましたが、登録は任意制度であるため、有効性に疑問が残ります。

建築営業には何ら強制力がない

現状は、優秀な登録業者以外は殆ど無秩序の状態です。宅建業法のように賃貸管理に関する業法の制定が必要です。さらに、サブリースビジネスの構造がこの問題を根深いものにしています。借り上げ保証をうたい、地主にアパート建築を進めるのはハウスメーカーの営業です。あくまで建築請負契約とサブリース契約は別物です。今回の改正内容は管理業者に対しての義務であり、建築営業に対しては何らの強制力も持ちません。

アパートを建ててから賃料減額の説明を聞いたとしても、アパートオーナー側は今更ノーと言えません。サブリース会社と提携関係にある建築会社にも連帯責任を課すべきでしょう。

地主に対して長期の借り上げをセールストークにしてアパート建築の請負だけ先に行ない、サブリース契約は引き渡し後が多く、対応として業界を横断し、賃貸管理の協会と建築の業界団体で、共通の自主ルールを作っていくことが求めらます。

ちなみに、レオパレス21はこの賃貸住宅管理業者登録制度に参加していません。(資料6)

アパートオーナーを保護する法規制が必要

借地借家法の理念は契約弱者である賃借人を保護するものです。サブリース契約では逆転現象が起きています。本来的な契約弱者であるアパートオーナーを保護する法規制の整備が必要です。

 

  • 消費者契約法の類推適用で契約弱者である賃貸人の保護
    不動産サブリース業について直接規制する業法は存在しません。消費者契約法第二条に関し、時代にあった「消者費」の定義の見直しを進める必要があります。
  • リスク性金融商品の勧誘・販売に際して説明義務や適合性原則、広告規制等を課している金融商品取引法並みな規制が必要です。
  • 建築から一定期間は近隣に同じアパートを建てさせないと言ったルール化が必要

土地活用や節税対策などからアパート経営にはいまも根強いニーズがあり、サブリース契約はアパート経営への参入障壁を低くする有効なビジネスモデルです。一方、地方における30年一括借上げの難しさも露呈しています。多大な将来リスクを伴うアパートビジネスにあって、長期的に安心してアパート経営に取り組める法規制の整備が喫緊の課題です。

 

 

(資料2)

最高判 平16・11・8 

http://www.retio.or.jp/case_search/pdf/retio/60-026.pdf

 

(資料3)

サブリース契約をめぐる判例法理の意義
――借地借家法32条との関係で――
小山泰史

http://www.ritsumei.ac.jp/acd/cg/law/lex/04-1/koyama.pdf

 

(資料5)

<衆議院インターネット審議中継>

宮本岳志議員(共産党)PM19:48~

衆議院インターネット審議中継 ビデオライブラリ(外部リンク)

<議事録>

衆議院予算委員会第一分科会議事録(PDF:191KB)

https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/tintai/

 

(資料6)

賃貸住宅管理業者登録制度

http://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/tintai/about/

 

大谷昭二(NPO法人日本住宅性能検査協会理事長)

 

(2)レオパレス21建築基準法違反

レオパレス21の違法建築(建築基準法違反)問題が大きな社会問題になっております。

最近になってこの問題がクローズアップされておりますが、レオパレス21のプレスリリースでは、1996年ころから一部の建築基準法違反があった事が確認されていると発表されております。

そもそも今回のレオパレス21の建築基準法違反とはどのようなものであるかと云う事を整理したいと思います。

 

  • 住戸界壁の遮音性能の基準未達違反(建設省告示第1827号)
  • 住戸界壁の構造基準違反
    共同住宅の界壁は、準耐火構造として小屋裏または天井裏に達せしめなければならない(建築基準法施行令だい114条第1項)
  • 外壁の構造が建設大臣認定とは不適合違反
  • 天井の構造が1時間耐火構造違反

以上のように、共同住宅と云う特殊建築物であるにもかかわらず、人命の安全第一と云う最大の使命をないがしろにした大きな問題である。

準耐火構造とは

準耐火構造とは、火熱が加えられた場合に、加熱開始後45分間、構造耐力上支障のある変形、溶裕、破壊等の損傷を生じない構造を言います。

共同住宅の各戸の界壁

住戸の界壁(住戸と住戸との間の境壁)の役割としては、法第30条の「長屋または共同住宅の各戸の界壁」で規定される遮音性能、法第36条「一般構造・防火構造の技術基準」で規定される防火性能について規定されております。

 

1)の(遮音性能の基準未達違反)問題については界壁構造部内部の充填剤が基準で決められたものではない

 

 

2)の(住戸界壁の構造基準違反)問題については

 

 

3)の(外壁の構造基準違反)問題については

 

4)の(天井の構造が1時間耐火基準を満たしていない)問題については

 

防火建材の間違い使用(意図的 材質変更)はもとより、ボードの二重貼りをしていないのは、明らかな手抜き工事と思われます。これでは、室内で火災が発生した場合には直ちに天井面から天井裏に火が回り、隣室への延焼は免れません。ましてや、小屋裏の防火界壁も設置していないとなれば、ひとたび火災が発生したら大惨事につながりかねません。

 

以上、今回のレオパレス21建築違反建物の問題になっている部分の概要を図説いたしましたが、これらの事象はこれだけ大規模になってくると、もちろん現場管理者の管理方法にも問題は有りますが、現場担当者が勝手にできる問題ではなく会社全体の問題だと捉えます。

 

そもそも、レオパレス21の建物はシリーズものとしてシステム化されているものであり、現場ごとの部品・部材対応が難しいものになっていると思います。現在問題になっている事項は、建築を管理する専門家であれば直ちに気の付く事ばかりです。

20年以上前からレオパレス21の共同住宅では「隣の声が筒抜けになっている」と云うようなエンドユーザーからの声を聴かないばかりか、黙々として問題の住宅を作り続けている事に会社全体の体質を感じます。

今回の問題は、会社全体として以下の項目に抵触すると考えられます

  • コストの圧縮による順法精神の欠如
  • 工期の短縮による順法精神の欠如
  • 資金の早期回転・回収を目的とした順法精神の欠如
  • 社員教育の不足(コンプライアンス教育・技術教育・現場運営能力開発 等)
  • 熟練技術者不足に対する対応不足
  • 労務・資材も含めた協力会社への教育不足
  • シリーズとして販売している不良品(欠陥住宅)を見付けられない社内体制

現状では、今起きている問題に対しての対処・応急措置だけに明け暮れておりますが、根本的な問題解決を根治しなければ、同じことが再び繰り返されるのではないでしょうか?

以上

 

NPO日本住宅性能検査協会
理事・一級建築士  木村健二

(3)外部調査委員会 施工不備問題に関する調査報告書 (概要版)

 2019 年(令和元年)5 月 29

表題のPDFは、下記のURLよりご覧ください。

https://www.leopalace21.co.jp/ir/news/2019/pdf/0529_4_1.pdf

 

*建築基準法違反の全容が明らかになった時点でCSR評価を行います。