特別寄稿:日本共産党 衆議院議員 宮本 徹(みやもと とおる)

 

衆議院議員の宮本徹です。昨年から財務金融委員会で、シェアハウス投資問題を取り上げ、スルガ銀行の不正行為とその問題を見逃してきた金融庁の監督責任を追及してきました。

 

 昨年9月7日に公表されたスルガ銀行の第三者委員会の報告書で、シェアハウス投資のみならず不動産投資全般で、審査文書の改ざんや偽造、不動産会社などと結託し市場価格を大きく上回る価格での販売、フリーローン契約などの抱き合わせ販売など不正・違法行為が日常的に行われていたことが明るみに出ました。経済を支える公的役割をになう銀行にあるまじき実態には、怒りを感じえません。将来的な住宅需要や価格の相場をみて妥当というものに融資をするのが本来の金融機関のあり方であり、事業性に乏しくても投資をする人の資産や収入から回収できると無謀な融資を進めていたスルガ銀行の営業姿勢は断じて許されません。

 

 一方で、スルガ銀行の実態を見過ごし、地銀の優等生としてスルガ銀行の経営方針を称賛してきた金融庁にも重大な問題があります。私の質問で、金融庁はかなり昔からスルガ銀行の不正疑惑の情報提供を受けていたにもかかわらず、何もしてこなかったことを認めました。2011年に審査文書の改ざん問題、2014年2月にはデート商法を活用した不動産投資の案件、2015年1月にはシェアハウス投資に関する悪質不動産業者との関係など、スルガ銀行の関与が疑われる情報提供がなされていましたが、金融庁は有効な手立てを打たずに黙認していたのです。

 

(注)財務省提出資料

 

2017年夏ごろでも当時の森信親金融庁長官は、地域金融機関の集まる会合で、「スルガ銀行は、ずうっと昔から普通の銀行が貸さない住宅ローンで、高い金利で貸している」と高収益な経営を褒め他の金融機関の模範のように話をしていました。金融機関を監督し安心安全な国内の金融システムを守る役割を担う金融庁が、スルガ銀行の不正に目をつむりむしろ見習えと言ってきたのですから、政府の責任も追及されなければなりません。

 

 現在、TATERUという不動産会社でも融資のための審査文書の改ざんが発覚し、レオパレス21や大東建託などのサブリース業でも不正行為が行われてきたことが明らかになりました。同時に、第二第三のスルガ銀行としていくつかの金融機関の名前が報道にも出てきています。人口減少が現実のものとしてすすみ空き家問題が各地で起こっているにもかかわらず、近年、貸家のための不動産投資が急激に伸びてきました。その背景にあるのが、安倍総理が訴えてきた「大胆な金融政策」によるゼロ金利・マイナス金利政策です。

 

 安倍総理が誇る「アベノミスク」の肝は、日本銀行の異次元の金融緩和政策です。黒田東彦日銀総裁は就任直後に市場金利の引下げのための措置を行ったのですが、その目的は、低金利により企業や個人の投資を促し経済の活性化を図ろうというものです。さらには、金融緩和により円安ドル高の為替環境を作り国内の大企業の輸出を促進することに狙いがありました。2016年1月にはさらにマイナス金利政策を導入し、長期の借入金利まで大きく引下げる判断を下しました。この結果、集めた預金を貸したり、国債の保有による金利で利益を得る地域金融機関は、融資を増やしても国債を保有しても必要な利益を確保できず経営が苦しくなってきたのです。その中で唯一飛躍的な伸びをしたのが貸家のための不動産投資でした。その内容はご存知の通り、シェアハウス投資やレオパレスのようなサブリースなど不動産投資が全国で増殖し、現在は問題が顕在化しています。一方、都心部では、不動産投資に資金が大量に流入したため不動産価格が高騰しバブルともいわれる事態となっています。真の需要がないものへの融資はいずれ崩壊します。都心部の不動産バブルも来年のオリンピック後には消えてなくなるかもしれません。

 私は、安倍内閣の経済政策を支えるため金融行政をゆがめてきた金融庁の責任は重大だと思います。いま政府がやるべきことは異次元の金融緩和政策をやめ金融行政を是正することです。同時に、アベノミクス政策により思わぬ巨額な負債を抱えることとなった人たちに救済の道を作ることです。そのうえで双方の負担も少なく和解による解決を図る不動産ADRの活用は重要です。和解の障害となる債務免除益課税などの問題についても、私の質問で金融庁は指導を約束しました。今後、一刻も早く問題解決にむけADRが活発に利用されることを期待します。私も、引き続き、国会で政府を追及し問題解決に向け取り組みたいと思います。

以上